抄録
ストレス状態におかれた植物体内で過剰に発生する活性酸素は、直接的に細胞内のタンパク質、脂質を酸化するだけでなく、脂質、アスコルビン酸、還元糖に作用することにより、過酸化脂質、デヒドロアスコルビン酸などを生じ、その一部がタンパク質と結合するのではないかと推定される。そこで、乾燥ストレスや塩ストレスなどの条件下におかれたキュウリ(Cucumis sativus L.suyo) 植物体から抽出液を調製し、活性酸素による間接的修飾を受けたタンパク質を認識する抗体として、抗AGE (Advanced Glycation End Products)抗体、抗ペントシジン抗体、抗CML (Carboxymethyllysine)抗体(以上、グリケーションによる修飾を認識する抗体)、抗MDA (Malondialdehyde)抗体、抗アクロレイン抗体(以上、過酸化脂質に由来する修飾を認識する抗体)を用いて免疫化学的解析を行った。2週齢のキュウリに8時間の乾燥ストレスを負荷したところ、乾燥ストレスの進行と共に抗MDA抗体により認識されるタンパク質の増加が見られた。また同じ抗体により認識される膜タンパク質の存在も観察された。以上の結果から環境ストレスによりタンパク質が修飾を受ける事が確認され、それら修飾タンパク質が生理機能に何らかの影響を及ぼしているものと推察される。