抄録
シロイヌナズナの概日リズム因子、LHY、CCA1、TOC1、GIは、相互に発現を調節しあうネガティフィードバックループを形成していると考えられている。光周性による花芽形成誘導機構として、次のようなモデルが提唱されている。長日条件下では、夕方に発現のピークを迎えるGIにより、中心的な花成促進因子COの発現が明期中(暗期直前)に誘導され、活性化されたCOによってその下流のFT、SOC1の発現が誘導され、花成に至ると考えられる。一方、短日条件下では、COが明期中に発現しないためその機能が活性化されず、下流因子の発現上昇が見られず、花成が誘導されないと考えられる。我々は、短日条件下でlhy cca1二重機能欠損株に極端な花成期間の短縮が見られることを明らかにした。この形質は、上記のモデルに従うと、1)LHYとCCA1の二重欠損により通常夕方にピークを迎えるGIの発現の位相が朝方にまで大幅に前進し、2)それに伴いCOが明期中に高いレベルで発現し、3)下流因子FTとSOC1の発現が誘導されて花成早化に至るというモデルで説明することができる。そこで、多重変異体を用いた花成時期調査および発現解析によるこのモデルの検証を試みた。今回は、概日リズム因子LHY、CCA1と、花成促進因子FT、SOC1との関係についての研究結果を中心に報告する。