日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
会議情報

全ゲノムクラスタリングによるシアノバクテリアと植物のゲノム比較
*佐藤 直樹
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 375

詳細
抄録
祖先シアノバクテリアの細胞内共生による始源真核光合成生物の誕生は,現在極めて有力な仮説である。シアノバクテリアから真核細胞にもたらされた遺伝子の数は,数千ともいわれるが,実際に共生したシアノバクテリアがはっきりしないほか,水平移動その他の寄与が明確でないため,厳密な推定はできない。本研究では,相同グループ法による全ゲノムクラスタリングによって,シアノバクテリアと植物のゲノムを比較し,シアノバクテリアから植物への遺伝子の伝達の度合いを見積もることを試みた。8種のシアノバクテリアと,3種の光合成細菌,2種の非光合成細菌と,出芽酵母,センチュウ,シロイヌナズナのオルガネラを含む全ゲノムにコードされた全タンパク質遺伝子セット(約10万遺伝子)の総当たりBLASTP検索を行い,いくつかのE値に対する閾値を用いて相同グループを形成した。シアノバクテリアと光合成細菌およびシロイヌナズナで共通に存在する遺伝子グループは約70あり,その半数は光合成に関連していた。残る半数に含まれるシロイヌナズナの遺伝子の大部分には,葉緑体輸送配列様延長配列が存在し,新規光合成関連遺伝子と推定された。各生物種における相同グループの有無をまとめることにより系統関係が得られたが,これは従来の16S rRNA配列に基づく系統樹とはいくつかの重要な点で異なっていた。今後さらに生物種数を増やし,詳しく解析する。
著者関連情報
© 2003 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top