抄録
Gloeobacter violaceus PCC 7421は単細胞性のラン藻であるが、他の多くのラン藻とは異なる性質を示す。光合成系のタンパク質をすべて細胞膜上にもち、細胞内にチラコイド膜が存在しない。その細胞膜内側に配位しているフィコビリンタンパク質の集合構造はロッド状で、光合成色素の構成もフィコビリンに比べてクロロフィル含量が低い。さらにその光合成活性は低く、Gloeobacterの生育は低照度でのみ可能で、極めて遅い。また、Gloeobacterは16SrDNA配列に基づく分子系統解析ではラン藻の系統樹のなかでももっとも古く分岐することから、進化の過程で他の多くのラン藻とは異なる遺伝的特徴を保持しているかもしれない。その全遺伝子情報の解明を目的として、Gloeobacter violaceus PCC 7421の全ゲノム構造解析をおこなった。ゲノムは4,659,019 bpの染色体からなり、プラスミドは存在しない。全ゲノムの平均GC含量は62%であった。2002年12月現在、遺伝子領域を予測中であるが、これまでに1774のタンパク質遺伝子の機能がアミノ酸配列の類似性をもとに推定された。本発表においては、Gloeobacterをこれまでにゲノム解析がおこなわれたラン藻と比較し、認められた遺伝子構成の特徴について報告する。