抄録
シアノバクテリアは,無機炭素濃縮機構(CCM)を持ち効率良く光合成を行っている.この CCM の構成要素としてカルボキシゾームが挙げられる.現在までに様々なカルボキシゾーム変異株が報告され,これらは High CO2 要求性を示す. 本研究では,このような High CO2 要求性株に対して外来 Ribulose 1,5-bisphosphate carboxylase/oxgenase (RuBisCO)を導入し,High CO2要求性の改善を検討した.
Synechococcus PCC7942においてカルボキシゾームレスミュータント(CL)を作成した.CLは High CO2 要求性,CO2 親和性の低下,0.5% CO2 環境下における顕著な生育阻害という3つの特徴が見られた.この変異株に外来 RuBisCO を導入するため発現ベクターを作成した.プロモーターとして 6803psbAII promoter を,外来 RuBisCO として Chromatium vinosum RuBisCO を用いた.これらが導入された CL(CL-AX)で,RuBisCO 活性が約5倍増加し,最大光合成速度は約 2.5 倍に増加した.さらに CL-AX では,0.5% CO2条件下において生育阻害が緩和された.