抄録
好熱性シアノバクテリア Thermosynechococcus elongatus BP-1は2002年に全ゲノム配列が決定され、遺伝子操作が可能であり、活性を持つ光化学系II複合体の単離が可能であることから、今後光合成研究を進めていくうえで極めて重要な生物である。T. elongatus BP-1の形質転換はこれまでにエレクトロポレーションと液体培地でのスクリーニングを組み合わせた方法が報告されている。しかし、この方法では形質転換体が得られるまで時間がかかることやコロニーとして得られないなどいくつか問題点がある。そこで本実験ではT. elongatus BP-1の遺伝子操作技術の開発・改善を目的とした。従来のエレクトロポレーション法にトップアガー法を組み合わせることによって短期間でコロニーとして形質転換体を得ることに成功した。また、電気パルスをかけずにDNAを添加するだけでも形質転換体を得られること(自然形質転換)も見いだした。この自然形質転換の最適条件を調べた結果、対数増殖期に起こりやすいことがわかった。ゲノム解析によれば、I型制限酵素のエンドヌクレアーゼ(tll2230)が見出された。この遺伝子の破壊株を作製したところ、形質転換効率が改善された。また1回交叉型組換えも高頻度で得られたが、自然形質転換ではほとんど検出できなかった。