抄録
高等植物の赤色は、多くの場合アントシアニンにより発色されているのに対し、ナデシコ科、ザクロソウ科を除くナデシコ目植物ではアントシアニンは合成されず、その赤色はベタシアニンにより発色されている。そこで、我々はナデシコ目植物には、なぜアントシアニンが存在しないのかという問題にアプローチを試み、ナデシコ目植物のフラボノイド合成について解析を行っている。ナデシコ目植物には、アントシアニンと生合成上近縁なフラボン、フラボノール等は存在していることから、これらと共通な前駆物質であるジヒドロフラボノールからアントシアニンに至る合成系の最初のステップを触媒するDFR(dihydoroflavonol 4-reductase)に注目し解析した。
今回、ナデシコ目のホウレンソウからRACE法によりORFの全長(1026 bp)を含むDFRcDNAを単離した。これと既知のDFRcDNAとの構造を比較したところ、そのアミノ酸配列において ブドウとは75%、Arabidopsis とは71%、ペチュニアとは70%、キンギョソウとは69%、シソとは67%、イネとは62%の相同性がみられた。このうちデータベース上に報告されているものの中では、ナデシコ目の中で例外的にアントシアニンを合成するナデシコ科のカーネーションと最も高い相同性(79%)を示した。