抄録
植物特異的な転写因子群Ethylene-responsive element binding factor(ERF)には、転写活性化因子と転写抑制因子が存在する。転写抑制因子は転写活性化因子による転写活性を抑制することから、その標的遺伝子の発現調節には転写抑制因子の活性制御が重要であると考えられる。
これまでに、タバコ転写抑制因子ERF3がユビキチン結合酵素NtUBC2と相互作用することを明らかにした。そこで、ERF3のタンパク質安定性を明らかにするために、大腸菌を用いて発現精製した組換えERF3と細胞抽出タンパク質とを試験管内で混合し、ERF3の蓄積量を解析したところ、ERF3は速やかに分解された。また、ERF3とGFPとの融合遺伝子を導入した形質転換タバコ培養細胞を用いて細胞内のERF3の蓄積量を解析したが、その蓄積を認めなかった。一方、試験管内、細胞内でERF3のDNA結合領域あるいは転写抑制領域は安定であった。これらの結果から、ERF3は不安定なタンパク質であるが、DNA結合領域ならびに転写抑制領域はその不安定性に関与しないと考えられ、NtUBC2とERF3の相互作用にDNA結合領域ならびに転写抑制領域が必要ないことと矛盾しなかった。