日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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発芽時のアブシジン酸(ABA)シグナル伝達系におけるホスファチジン酸(PA)の機能解析
*片桐 健関 原明小林 正智加藤 友彦田畑 哲之篠崎 一雄
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p. 397

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抄録
アブシジン酸(ABA)は種子休眠、気孔の開閉、浸透圧ストレス耐性に関わる植物ホルモンであり、ABAシグナル伝達系の分子機構の解明は、植物科学の重要課題である。細胞膜は外界からのシグナルを受容する場と考えられ、それを構成しているリン脂質の1つホスファチジン酸(PA)は、外界からの種々のシグナルによって特異的に代謝されることが知られている。
我々はPAの生理機能を遺伝子レベルで理解する目的で発芽時のPA産生量を測定したところ、一過的に上昇することを見出した。したがって発芽時に機能するPAの代謝酵素が、ABAのシグナル伝達に重要な役割をしていると仮定し、PAの分解酵素であるホスファチジン酸ホスファターゼ(PAP)、PAの産生酵素であるホスフォリパーゼD(PLD)に注目した。PAP、PLDともにいくつかの相同遺伝子がゲノムに存在するので、種子及び芽生えの発現解析から発芽時に機能しうるPAP、PLDを絞り込んだ。対応するノックアウト変異体(KO)を用い発芽時のABA感受性試験を行ったところ、PAP-KOはABA高感受性であること、PLD-KOは種子休眠が浅いことを見出した。以上の結果からPAは休眠、発芽という現象に関与し、ABAのシグナル伝達に機能することを遺伝子レベルで明らかにした。現在、それぞれの過剰発現型形質転換植物も加え、リン脂質代謝系のABAシグナル伝達における機能解析を行っている。
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© 2003 日本植物生理学会
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