抄録
タバコERF2は、防御遺伝子のプロモーター領域に見いだされたエチレンおよびエリシターに応答する転写を制御するシスエレメント(GCC box)に結合する転写因子である。しかし,キチナーゼ遺伝子などプロモーター領域にGCC boxを持ちERF2の標的遺伝子であると考えられている遺伝子の発現をERF2がタバコ細胞内で制御するかどうかは不明であった。本研究ではERF2あるいはERF2とGRの融合遺伝子(ERF2:GR)を、CaMV35Sプロモーターで過剰発現させたタバコ植物体を作成し、標的遺伝子の発現変動について解析した。
各形質転換タバコにおいて、プロモーター領域にGCC boxを持つ BCHN遺伝子およびGCC boxを持たないHsr203J遺伝子の発現量をノザン法で調べた。35S::ERF2植物では、BCHN遺伝子の発現量が増加していたが、Hsr203J遺伝子の発現量は増加していなかった。また、35S::ERF2:GR植物においてERF2:GRの核移行を誘導するためにDEXを処理すると、BCHN遺伝子の発現量が上昇したが、Hsr203J遺伝子の発現量は上昇しなかった。この時、DEX処理によるBCHN遺伝子の発現誘導に対するエチレンの影響を阻害剤STSの処理で検討したところ,エチレン非依存的にDEX処理によってBCHN遺伝子の発現誘導が起こることが示唆された。これらの結果から、ERF2は、タバコ細胞内においてGCC boxを介した防御遺伝子の転写活性化に働いていると考えられた。