抄録
青色光による気孔開口や、アブシジン酸による気孔閉鎖にプロテインキナ-ゼが関与する事が明らかになっており、孔辺細胞のシグナル伝達にキナーゼが重要な働きを持つと考えられているが、その実体は不明の点が多い。
本研究では孔辺細胞のシグナル伝達に関与するプロテインキナーゼの特質を知る目的でキナ-ゼの遺伝子vfPK1をソラマメ孔辺細胞から単離し、以下の結果を得た。vfPK1は455アミノ酸残基からなる新規のタンパク質をコードする遺伝子であり、そのアミノ酸配列から植物SNF1関連プロテインキナーゼのSnRK3グループに属することがわかった。 vfPK1遺伝子発現の組織特異性をノーザンブロッティング法で調べた結果、孔辺細胞の他に根でも多く発現していた。しかし、葉肉細胞にはほとんど存在しなかった。さらにvfPK1を大腸菌内で発現、精製後、キナーゼ 活性を測定すると、自己リン酸化活性を持つ事が確認された。次に、vfPK1の全長をベイトに用いた酵母two-hybrid法を行った結果、カルシウム結合タンパク質(CBL)をコードする遺伝子(vfCBL1)が相互作用する蛋白質として同定された。vfCBL1はシロイヌナズナのAtCBL2と88.3%のアミノ酸同一性を示し、カルシウムを介した情報伝達に関与する可能性がある。vfPK1のキナーゼ活性にvfCBL1がどのような影響を与えるのか現在解析を進めている。