日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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ヒメツリガネゴケ完全長cDNAの過剰発現による細胞極性、不等分裂、細胞分化関連遺伝子の同定
*藤田 知道日渡 祐二西山 智明村田 隆長谷部 光泰
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p. 414

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抄録
細胞が不等分裂し、それぞれが異なる運命をもつ娘細胞に分化していく過程は、細胞の多様性を生み出す根元的事象である。しかしながら、その分子メカニズムの多くは未解明である。コケ植物ヒメツリガネゴケは、形態が単純で細胞レベルでの研究に適しており、また、オーキシンやサイトカイニンにより細胞の分化を簡単に制御できる点で、不等分裂や細胞分化の分子機構解明に優れた研究材料である。更に、高効率の相同組換えが可能であり、正確な遺伝子機能解析が期待できる。ヒメツリガネゴケプロトプラストの再生過程は、増殖能を維持し続ける幹細胞と、より分化した娘細胞とに分かれる不等分裂を繰り返している。我々は、この点に着目し、ヒメツリガネゴケの配列決定済みの完全長cDNAをヒメツリガネゴケ単離プロトプラストに一過的に過剰発現させることで、再生過程に異常を引き起こす原因遺伝子のスクリーニングを行っている。これまでに2,000以上の遺伝子を過剰発現させた。その結果、不等分裂が等分裂になるもの、幹細胞が多数できるもの、不等分裂がおこらず細胞伸長のみが起こるもの、あるいは細胞形態が変わるものなどの異常が約5%の割合で見られた。これらの原因遺伝子として、転写因子、キナーゼ、タンパク質修飾に関係する情報伝達因子、機能未知のものやヒメツリガネゴケに特異的と思われるものなどが同定できた。
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© 2003 日本植物生理学会
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