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生物時計は遺伝的に組み込まれた24時間周期を刻むリズム機構であり、バクテリアから高等真核生物にまで保存されている。シロイヌナズナは遺伝学的に生物時計が最もよく研究されている植物であるが、その詳細な分子基盤の統合的な理解は至っていない。そこで我々は、生化学的、分子生物学的アプローチが容易と思われるシロイヌナズナ培養細胞系を、時計の分子機構理解のためのツールとして利用できないか検討した。培養細胞(T87)を22℃ 18日間、12時間明/暗条件下、培養プレート上で生育させた後、連続明条件下あるいは連続暗条件下での時計関連遺伝子のリズムを解析した。その結果、明暗条件下及び連続暗条件下では、APRR遺伝子群やCCA1を始めとする時計関連遺伝子の24時間周期の発現リズムが観察された。一方連続明条件下での発現リズムは認められなかった。培養細胞における時計関連遺伝子の発現リズムと植物体でのそれを対比させながら、培養細胞系の生物時計解析ツールとしての可能性を考察する。