抄録
我々は以前高等植物シロイヌナズナから、N末端に疑似レスポンスレギュレーター様の配列を、C末端に特徴的な配列(CCTモチーフ)をもつ5つのタンパク質を見出し、APRR1/TOC1, APRR3,5,7,9と名付けた。これら遺伝子群の最大の特徴は、その転写産物量がAPRR9,APRR7,APRR5,APRR3,APRR1/TOC1の順に規則正しく概日リズムを刻むことである(サーカディアンウェイブ)。その1つであるAPRR1はTOC1と同一であり、植物時計の中心振動体の構成成分の1つとして機能することが示唆されてきた。中心振動体の自律振動とそれに依存した概日リズムの形成は、中心振動体の発現振動に応答したフィードバック機構と出力機構に依存していると考えられている。そこで、上記機構を解明する手がかりを得るために、我々はAPRR1/TOC1と相互作用する因子を検索し、Phytochrome Interacting Factor 3 (PIF3)と相同なbHLH型転写因子PIF3 Like Protein 1 (PIL1)を同定した。この因子のbHLHドメインのアミノ酸配列は、シロイヌナズナのデータベースに登録されている139のbHLHタンパク質の中でフィトクロムの情報伝達系に関わるPIF3, PIF4等を含む一群のファミリーを形成していた。本題ではこのファミリーに分類した6つのbHLH型転写因子に焦点をあて、APRRsの働きとの関連という観点から解析を行い、APRRsとの相互作用、発現様式の特徴の解析に加え、過剰発現体及び欠損体の解析結果を報告・考察する。