抄録
シロイヌナズナ全ゲノムの塩基配列が決定され、Tag-lineを用いた遺伝子破壊株の解析が、遺伝子機能を同定するうえで重要な手法の1つになっている。我々は、植物遺伝子の包括的な機能解析にむけてT-DNA Tag-lineの大規模な作製を行ってきた。導入するT-DNAの中にはレポーター遺伝子としてGUS遺伝子を挿入しており、ジーン・エンハンサートラップ法による遺伝子の発現解析が可能である。根端でGUS遺伝子の発現が見られるラインのスクリーニングから、根の伸長が野生株に比べて抑制されているラインを単離した。T-DNAはABCタンパク質遺伝子に挿入されており、このABCタンパク質遺伝子は酵母のGCN20という遺伝子と相同性が見られた。次に酵母でGCN20と結合することが知られているGCN1のシロイヌナズナオルソログを解析するため、Tag-lineから遺伝子破壊株の単離を行った。単離した8つの破壊株のうち、1つのラインでGUS遺伝子の発現が確認された。根での発現はABCタンパク質遺伝子と同様のパターンを示し、さらに地上部では若い葉・雌ずいで発現が見られた。N末端側にT-DNAが挿入されているラインでは、根の伸長が著しく抑制されており、さらに不稔であった。またABCタンパク質とシロイヌナズナGCN1は酵母Two-hybrid法により相互作用することが確かめられた。以上のことから2つの遺伝子は根の伸長を制御していることが明らかとなった。