抄録
SRタンパク質はN末側のRNA結合ドメインとC末側の長さの異なったアルギニン/セリン-リッチドメインに特徴づけられる構造を持っている。SRタンパク質はスプライシングに必須な因子であり、スプライソソームの構築などスプライシングの基本的な機能をもつと同時に、スプライシングエンハンサーなどに結合し、選択的スプライシングを行うことが知られている。
我々はイネから、SRタンパク質をコードしていると考えられる19種のcDNAを単離している。この中には植物特異的な構造をもつSRタンパク質が7種ある。このうち、植物特異的なOsSR3はエキソン1内に2つの弱い5'スプライス部位を形成するWxbのスプライシングを促進する効果があることが、イネの培養細胞を使った実験により明らかになった。さらに、全てのイネSRタンパク質についてSELEXにより結合配列を決定しようとしている。これまでのところ、OsSR3は新規な配列とともに、ASF/SF2結合配列とほぼ同じプリンリッチ配列に結合することがわかった。このことから、植物特異的な構造をもっているSRタンパク質においても、選択的スプライシングにおける機能は動物と一部重複している可能性が考えられる。また、SRタンパク質を過剰発現させる形質転換イネを作出中であり、選択的スプライシングを受けるmRNAのスプライス部位の選択への影響をみる予定である。