抄録
我々はこれまでに,シロイヌナズナのAtMFDXとAtMFDRを,それぞれ新規のフェレドキシン遺伝子とフェレドキシン還元酵素遺伝子として同定し,cDNAクローニングと組換えタンパク発現によって,これらの遺伝子にコードされるタンパクが,動物アドレノドキシンとアドレノドキシン還元酵素の機能ホモログであり,NADPHを電子供与体とした電子伝達鎖を構築することを示した.PSORTとTargetPプログラム解析では,AtMFDXとAtMFDRタンパクがミトコンドリアに局在することが予測されている.今回,これらの電子伝達体がどのような末端酵素と電子伝達鎖を構成するかを解明することを目的にして,昆虫細胞系で発現させたAtMFDRタンパクに対するウサギ抗血清と大腸菌で発現させたAtMFDXに対するマウス抗血清を用いて,これらのタンパクの細胞内局在性を検討した.まず,ウエスタンブロット解析では, AtMFDR タンパクが地上部のいずれの部位(葉,花芽)にも蓄積していることがわかった.さらに,AtMFDRタンパクは膜画分に特異的に局在すること,また可溶性画分には存在しないことが明らかとなった.しかし,細胞分画によって得られた単離葉緑体とミトコンドリアにはAtMFDRタンパクの顕著な蓄積は認められなかった.一方,免疫組織学的には,AtMFDRは葉緑体とは明らかに異なる細胞内構造に蓄積していることが示された.現在,このAtMFDRタンパクの局在する細胞内構造の特定に向けて検討を行っている.