抄録
Bisphenol A (BPA) は内分泌攪乱化学物質の1つとして、生態系への影響が懸念されている。発表者らは植物を用いたBPAの回収を目的として、タバコによるBPAの吸収と代謝について研究をおこなった。その結果、代謝物の1つがBPA-ο-β-D-glucoside (BPAG) であることを同定した (P C P 2002, 43: 1036-1042)。本研究ではBPAの配糖化酵素 (BPAGTase) の性質を調べた。2週間培養したタバコ培養細胞(BY-2)の粗抽出液を用いて酵素反応を行った。反応は50mM Tris-HCl pH7.5, 1 mM 2-mercaptethanol, 1mM UDP-Glucose (UDPG), BPA 50~500μM になるように加え30℃、10分反応させ、生成したBPAGをHPLCにより定量した。また、播種後3週間のタバコ実生 (Xanthi NC) の根、茎、葉のBPGTase活性を同様の方法で測定した。培養細胞由来のBPAGTaseのBPAに対するkmは82μMであった。この値は、これまでに報告されている配糖化酵素と同等の値であった。BPAGTase 活性はタバコ実生にも存在し、葉では根の約4倍、茎の3倍の活性が見られた。以上の結果、BPAGTaseは主に葉で働いてBPAをBPAGに代謝して、無毒化しているものと考えられる。