日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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ヒメツリガネゴケの耐凍性に関わるABA・低温誘導性プロテインキナーゼの機能解析
*南 杏鶴長尾 学荒川 圭太藤川 清三竹澤 大輔
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p. 459

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抄録
 植物が低温馴化により耐凍性を獲得する過程では、タンパク質のリン酸化や脱リン酸化が関わっていると考えられている。我々は、蘚類ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)原糸体が、ABAや低温、高浸透圧処理によって凍結耐性を上昇することを以前に示した。ABA・低温処理によってmRNAの顕著な発現誘導が起こるPARK(P. patens ABA-responsive protein kinase)遺伝子は、セリン・スレオニンプロテインキナーゼをコードしていた。PARKはシロイロナズナのS-ドメインレセプター様プロテインキナーゼとキナーゼドメインにおいて56.4%の相同性があるが、細胞外ドメインを持たず、N末端は膜貫通ドメインと思われる疎水領域から始まっていた。GST融合タンパク質を用いたPARKのリン酸化活性の解析では、ミエリン塩基性タンパク質やヒストンIIISの基質をリン酸化し、PARK自身も自己リン酸化することが分かった。また、GFP融合遺伝子による解析では、PARKの細胞膜周辺への局在が示された。PARK遺伝子破壊株の耐凍性を調べた結果、ABAや低温処理した破壊株では、野生株より低い凍結耐性を示した。これらの結果から、PARKが細胞膜結合型プロテインキナーゼとして、ヒメツリガネゴケのABAや低温による凍結耐性上昇のシグナル伝達の制御に関与している可能性が示唆された。
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© 2003 日本植物生理学会
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