抄録
イネよりbZIP型転写因子をコードする新たなcDNAを単離した。全長cDNAは1,277bpからなり、145アミノ酸からなるタンパク質をコードしていた。このcDNAはトウモロコシOBF1遺伝子と高い相同性(ヌクレオチドレベルで60.9%、アミノ酸レベルで86%)がみられたためOsOBF1と命名した。サザンブロット解析の結果、この遺伝子はイネゲノム中に単一コピーで存在することが判明した。遺伝子産物であるOsOBF1は核に局在し、ヘキサマー配列(5'-ACGTCA-3')への結合が確認されたが、トウモロコシOBF1とは異なり、ocsエンハンサー配列への結合は確認されなかった。In vitro実験系において、OsOBF1はホモダイマーを形成するだけでなく、LIP19とヘテロダイマーを形成した。OsOBF1転写産物は成熟した葉でより強い発現が確認されたが、対照的にlip19転写産物は老化葉での発現が観察された。またlip19が低温で発現が誘導されるのに対し、OsOBF1転写産物の発現はみられなかった。これらの結果に基づき、イネの成長とストレス応答へのOsOBF1の関与及びOsOBF1とLIP19のヘテロダイマーによる転写制御の可能性を考察する。