抄録
我々は、低分子量熱ショックタンパク質(HspA)をコードする遺伝子を大腸菌―Synechococcus sp. PCC 7942シャトルベクターにクローニングし、このシアノバクテリアに導入してHspAを構成的に大量発現する株を構築した。HspA構成的発現株の致死温度処理後の生存率、光化学系IIやフィコシアニンの熱安定性が対照株に比較して上昇した。これらの結果は、高温ストレス下で、低分子量HSPがフィコビリタンパク質やチラコイド膜(タンパク質)と相互作用して光合成の集光機能や電子伝達系を防御することを示唆するものである。
本研究では、HspAやGroELとフィコビリタンパク質との相互作用の解明を目的とした。上記のHspA構成的発現株からフィコビリソームをショ糖密度勾配超遠心分離法で精製したところ、「重い」画分(天然型のフィコビリソーム)と「軽い」画分に分離された。この軽い青色の画分にはフィコビリタンパク質に加えHspAとGroELが存在し、フィコビリソーム「解離産物」が分子シャペロンの標的となることが示唆された。フィコビリソームの構成ポリペプチドから天然型の巨大複合体への集合(あるいは逆に分解)の途中段階のタンパク質集合体がHspAやGroELなどの分子シャペロンの標的となると仮定してイン・ビトロの解析を行っている。