日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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シアノバクテリアHtpGの分子シャペロン機能
*尾 洋史小池 仁仲本 準
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p. 466

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抄録
 HSP90は真核生物の細胞内に大量に存在する主要HSPの一つであり、酵母やショウジョウバエでは必須タンパク質であることが明らかにされている。変性タンパク質の凝集抑制に加え、平常時でも、多くの転写因子やシグナル伝達分子と複合体を形成し、これら標的タンパク質への結合・解離を通して広範な細胞機能を制御している。
 大腸菌や枯草菌にはHSP90ホモログがHtpGしか存在しないが、欠損しても致死とはならないし、高温における生育や生存率に顕著な差が認められない。変異株の表現型が現れないために、HtpGの機能は不明であった。
 我々は、HtpG遺伝子をシアノバクテリア(Synechococcus sp. PCC 7942)からクローニング後、遺伝子破壊株を作製し、原核生物では初めてHtpGが高温における増殖や生存に必須のものであることを明らかにした。本研究では、HtpGタンパクを精製し、オリゴマー構造や分子シャペロン活性の測定などの生化学的解析を行った。ホモ二量体を形成するHtpGはcitrate synthaseなどのタンパク質の熱変性による凝集を阻止する活性を示した。凝集体形成がほぼ完全に阻止されるときのHtpGと標的タンパク質のモル比は、等モルあるいは2:1であった。C末端側の124アミノ酸残基を欠損したHtpGは二量体を形成できなかった。標的タンパク質との相互作用に果たすオリゴマー形成の役割についても報告する。
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© 2003 日本植物生理学会
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