日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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ヒルムシロ殖芽の嫌気的成長におけるスクロース代謝の役割
*原田 太郎石澤 公明
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p. 47

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抄録

 水生単子葉植物のヒルムシロ(Potamogeton distinctus A. Benn.)の殖芽は、空気中ではほとんど成長しないが、無酸素条件下では急速に伸長するという特異な性質をもっている。この成長は、解糖系による高いエネルギー生産により維持されている。その糖の供給源としてデンプンが急速に分解されていることが、デンプン量の低下ばかりではなく、アミロプラストの数、大きさの変化からも明らかとなった。デンプン分解に関与するα-アミラーゼとホスホリラーゼの全活性は、無酸素条件下で増大することはなかったが、そのアイソザイムをnative-PAGEにより分析した結果、無酸素条件下で活性が高く保持されているものがあることが明らかとなった。特にplastidに存在すると言われているホスホリラーゼのアイソザイムが、デンプン分解に関わる可能性が考えられる。
 殖芽のスクロース含量は、無酸素条件下で急速に低下するが、スクロース合成も活性化されている証拠がある。スクロースの合成・分解に関わる酵素の活性は、無酸素条件下で高い傾向にあり、特にスクロースシンターゼ(SuSy)の活性上昇が顕著である。トウモロコシのSh1と相同性の高いSuSyをコードする遺伝子の発現が嫌気条件で高まることから、このSuSyが嫌気条件下でのスクロース分解に重要な役割を果たしている可能性がある。

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© 2003 日本植物生理学会
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