日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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葉緑体型アスコルビン酸ペルオキシダーゼの結晶構造と反応機構
*和田 啓多田 俊治吉村 和也石川 孝博重岡 成西村 勁一郎
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p. 475

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抄録
【目的】アスコルビン酸ペルオキシダーゼ(APX)アイソザイムは、高等植物において常時もしくは種々のストレス環境で生成される H2O2 の消去に機能するヘムタンパク質である。この消去反応において、本酵素は特異的電子供与体としてアスコルビン酸 (AsA) を必要とする。本研究では、葉緑体型 APX の X 線構造解析による AsA の結合部位を含む反応機構の解明を目的とした。
【方法および結果】タバコ葉緑体型 APX の結晶タンパク質を 10 μM H2O2、あるいはそれに 100 mM AsA を加えた溶液に数秒から数分間浸した後、液体窒素気流下で凍結させて回折X線の測定を行った。また同時に結晶の顕微分光を測定し、可視光の吸収変化から結晶中の反応状態の評価を行った。測定は大型放射光施設 SPring-8 において行い、構造は分子置換法により決定した。その結果、反応中間体と考えられる二種類の構造を決定した。H2O2 反応後の状態と考えられる中間体の構造においては、触媒残基である Arg のディスオーダーが観測された。また、H2O2 および AsA の両者を添加した系の結晶においては明瞭な AsA の電子密度が得られ、AsA の結合部位を決定することができた。これらの構造から、H2O2 の結合によりヘム遠位の Arg 側鎖が移動し、ヘム-γ端の近傍に結合した AsA から電子を受け取る反応機構が考えられた。
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© 2003 日本植物生理学会
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