日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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過敏感反応における葉緑体脂質のリノレン酸の役割
*八丈野 孝射場 厚
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p. 498

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抄録
 高等植物は病原菌感染に対して、O2-生成を端緒とした過敏感反応を引き起こすことにより抵抗性を示す。O2-生成はNADPH oxidaseにより行なわれると考えられているが、その調節機構はよくわかっていない。我々は2002年分子生物学会年会においてリノレン酸がNADPH oxidaseの活性調節に関与することを報告した。トリエン脂肪酸であるリノレン酸は、生体膜脂質を構成する主要な不飽和脂肪酸である。in vitroのNADPH oxidase活性測定系において種々の不飽和脂肪酸について調べた結果、リノレン酸は顕著にNADPH oxidaseを活性化した。シロイヌナズナにおいて、トリエン脂肪酸合成の鍵酵素であるω-3不飽和化酵素は、小胞体型FAD3、葉緑体型FAD7、FAD8の3つが同定されている。NADPH oxidaseを活性化するオゾン処理によりin vivoでのO2-生成を調べたところ、fad7fad8変異体においてO2-生成レベルが低下していた。また、fad7fad8変異体におけるPseudomonas syringae pv. maculicola (avrRps4)に対する抵抗性が低下していた。さらに、オゾン処理によって葉緑体脂質のトリエン脂肪酸含量が著しく低下した。これらの結果から、葉緑体のリノレン酸が過敏感反応におけるNADPH oxidaseの調節に重要な役割を果たすと考えられた。
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© 2003 日本植物生理学会
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