日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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ABAによる発芽阻害過程におけるシロイヌナズナ遺伝子の発現解析
*中林 一美神谷 勇治南原 英司
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p. 507

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抄録
アブシジン酸(ABA)は、種子の成熟および休眠性の獲得と維持に重要な役割を果たしており、種子発芽時にABAを添加すると発芽遅延や発芽阻害がおこる。しかし、ストレス応答に関連したABA 誘導性遺伝子に比べて、この発芽阻害における遺伝子発現の変化についての知見は非常に乏しい。そこで、種子休眠のメカニズムを理解する一歩としてシロイヌナズナの種子を3 μM ABA存在下で吸水させ、DNAマイクロアレイ(Affymetrix)および定量的RT-PCRを用いて遺伝子の発現解析を行った。その結果、吸水24時間後では通常の吸水との遺伝子発現の違いは小さく2倍以上の差異を示すものは約500遺伝子であり、それらの発現レベルは比較的低い部分に集中していることが明らかとなった。発芽の過程で発現が誘導されるGermin遺伝子などは、ABA存在下で誘導が抑制されるものが多く、反対に発芽の過程で発現レベルの下がる種子貯蔵タンパク質遺伝子などでは減少が緩やかになるものが多かった。また、これまで様々な植物種でABA活性を有することが示されているアナログの(-)-(R)-ABAを用いて同様の実験を行ったところ、(-)-(R)-ABAが天然型と似たメカニズムで ABA誘導性遺伝子を活性化していることが示唆された。
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© 2003 日本植物生理学会
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