抄録
植物は重力方向に根を伸長させるとき、障害物に当たるとそれを避けるように伸長方向を変化させる。この現象をシロイヌナズナでは45°に傾けた寒天培地表面に根を這わせることで観察できる。適切な寒天濃度条件下では根は重力方向へ成長することと寒天面への接触を避けることの繰り返しで波状の成長パターンを示す。我々は接触刺激によって根端の成長方向を変化させる分子機構を明らかにするため、波状成長パターンが異常になったシロイヌナズナの突然変異体を6つ単離し、wav1~wav6 とそれぞれ名付けた1)。
これらのwav突然変異体のうち、今回報告するwav2は野生型に比べて根の波状成長の波長が詰まっている突然変異体である。この変異体では波の屈曲の角度は野生型の約2倍、波のピッチは野生型の約2分の1の値を示した。また、WAV2遺伝子はマップベースクローニングから機能未知でN末端に膜貫通ドメインを持つ309アミノ酸残基の蛋白質をコードする遺伝子であることが明らかになった。現在、我々はWAV2の発現および蛋白質の機能解析を進めている。本発表では波状成長異常突然変異体の表現型とWAV2蛋白質の機能についてこれまで得られた最新のデータを報告する。
1) Okada & Shimura (1990) Science vol.250, pp. 274-276