抄録
緑色硫黄細菌Chlorobium tepidumでは全ゲノム塩基配列がTIGRにより明らかにされたが、そこには酸素発生型光合成生物のferredoxin-NAD(P)+還元酵素(FNR)と類似性の高いタンパク質をコードする遺伝子は存在しなかった。われわれはこの細菌からFNR活性を持つタンパク質を精製しそのN末端アミノ酸配列を決定したが、このタンパク質は生理的条件下ではホモダイマーとして存在し、データベース検索から得られた推定アミノ酸配列は、NADPH-チオレドキシン還元酵素(TR)と相同性が高いなど、これまでに報告のない新たなタイプのFNRであることがわかった。ゲノムデータベースより、この細菌FNRと相同性の高いアミノ酸配列をもつ他の生物のタンパク質を検索した結果、ジスルフィド還元酵素群、特にTRと高い相同性を示す5つの遺伝子が見つかった。しかもこの5つの遺伝子は真正のTRとは異なり、チオレドキシン還元に必須な2つのシステインを含むモチーフを持っていなかった。この5つの遺伝子のうち、グラム陽性細菌Bacillus subtilisには2つの遺伝子が存在している。これらの遺伝子産物が緑色硫黄細菌同様にFNRとして機能している可能性を探るため、われわれはB. subtilisからFNR活性を持つタンパク質の精製を試みた。