抄録
Nostoc sp. KU001が窒素固定の為に分化させるヘテロシスト細胞(heterocyst)と、通常細胞(vegetative cell)の細胞毎の蛍光・吸収スペクトルと細胞内色素分布を、高分解能顕微分光法により調べた。heterocystとvegetative cellは色素組成が異なり、培養光条件に応じて各々補色適応を示し、細胞の色素組成が変わる。これを細胞毎に確認した。測定装置は、共焦点レーザー顕微鏡に分光器を配置し、冷却CCD(スペクトル測定用、-85℃)と冷却PMT(構造スキャン用、-30℃)で光を検出する。空間分解能0.2μm、波長分解能1nm以下で、フィラメントを構成する各細胞のスペクトル測定が可能である。同一培養光条件下でも、heterocystとvegetative cellのフィコビリンとクロロフィルの蛍光極大波長には差がある。各細胞は細胞サイズには無関係に、異なった蛍光・吸収スペクトルを示す。heterocystのPE(フィコエリスリン)、PC(フィコシアニン)含量はvegetative cellの半分以下で、PEの蛍光収率は高い。異なる培養条件下で得られた個々のheterocyst、vegetative cellの細胞内色素分布と蛍光収率を解析することで、細胞集団全体の平均値を見る従来型のマクロな分光法では得られない、細胞毎のゆらぎに関する情報が得られた。