抄録
アカリオクロリスは近赤外光を吸収するクロロフィルd(Chl d) と少量のChl aを30:1の比で持つ。系II反応中心でのChl dとChl aの役割を調べるために、光反応で電荷分離・電子移動が起こった後、逆反応の電荷再結合で発せられる遅延蛍光を測定した。光励起後0.1-2.9ミリ秒領域での発光をBecquerel型燐光計で測定し、これが720nmに発光ピークを示すChl d由来の遅延蛍光であることがわかった。レーザー閃光照射後1-100マイクロ秒での遅延蛍光も、720nmに発光ピークを示した。ミリ秒領域・マイクロ秒領域ともに、Chl aの寄与を示す680nm付近の発光ピークは確認されなかった。また、ミリ秒遅延蛍光の励起スペクトルはフィコビリンとChl dの吸収に対応する630nmと720nmに各々極大を示し、そのピーク比は1:1であった。フィコビリンとChl dの吸収スペクトルのピーク比は1:2であり、フィコビリンから反応中心へのエネルギー移動の効率を95%と仮定すると、見かけ上のChl dの励起効率は0.49と計算され、Chl dの約半分が系IIに属していることが示された。これは17%のChl aのみが系IIに属することが遅延蛍光から推定されるSynechocystis PCC6803とは大きく異なる。