日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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緑藻ミルにおけるシフォナキサンチンからクロロフィルへのエネルギー移動過程の解析
*三室 守秋本 誠志村上 明男坂和 貴洋高市 真一山崎 巌
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p. 531

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抄録
 海産大型緑藻ミルは、共役二重結合に共役したケトカルボニル基を持つという特殊な分子構造をしたカロテノイド、シフォナキサンチン (Sxn) を光合成色素として持つ。色素−タンパク質複合体内では Sxn の吸収帯は約 30 nm レッドシフトし、この色素からクロロフィル(Chl) への高いエネルギー移動効率によって、緑色光しか届かない海洋環境でも高い光合成活性を維持できることが知られている。今回、エネルギー移動過程をフェムト秒蛍光アップコンバージョン法によって解析した。また特異な吸収極大である 530 nm の吸収帯がどのような分子機構によって形成されるかについて考察をした。
 その結果、(1) 530 nm 吸収帯は蛍光寿命から第2励起準位であること、(2) Sxn から Chl へのエネルギー移動は第1励起準位のみから起こり、フコキサンチンやペリディニンと共通であることも確認された。これによって量子収率が1に近いエネルギー移動効率が維持されていることが判明した。一方、530 nm 吸収帯に対応する蛍光の偏光度は 0.29 であるが、Sxn 溶液ではほぼ理論値に合致した 0.38 であることから、Sxn 間の相互作用による新しい電子状態の形成という可能性も考えられた。現在進行中の色素タンパク質の分光特性と併せて議論をする。
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© 2003 日本植物生理学会
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