抄録
植物のイソプレノイドは色素体のメチルエリスリトールリン酸(MEP)経路、または細胞質のメバロン酸(MVA)経路から合成される。一般に、MEP経路は色素体内のカロチノイドやフィトール等の生合成に、MVA経路は細胞質のステロール等の生合成に主要に働くが、それぞれの経路は完全に独立しているわけではなく、生合成中間体の交換(クロストーク)が部分的に行われる。したがって、これらの二つの生合成経路が、様々な生理的局面において、それぞれ下流の各種イソプレノイド生合成にどの程度寄与するのかは明らかでない。演者らは、MEP経路の一つの酵素である1-デオキシ-D-キシルロース 5-リン酸レダクトイソメラーゼの特異的阻害剤であるフォスミドマイシンに耐性を示す突然変異株を選抜することにより、MEP経路の制御因子、またはMEP経路とMVA経路間のクロストークに関わる因子の同定を試みている。実際に、MEP経路の一部の酵素を過剰生産する形質転換植物はフォスミドマイシン耐性を示したことから、本スクリーニングによりMEP経路が活性化されているような株が選抜される可能性が期待された。そこで、約16000の独立したT-DNA挿入ラインを、フォスミドマイシンの子葉白化作用に対する耐性を指標にスクリーニングしたところ、いくつかの候補株が得られた。現在、これらの突然変異株の原因遺伝子の解明とMEP経路の解析を進めている。