抄録
赤色光に青色光を添加して,長期的に照射して成育させた植物では,赤色光のみの照射と比較して乾物生産性が向上する傾向にあるという報告があるが,その機構は未解明である.そこで本研究では,青色光の添加が植物の成長に与える影響を解明することを目的として,長期的な赤色光および赤青混合光照射下におけるイネの個体成長および各器官,すなわち葉身,葉鞘,根への窒素分配について調べた.イネ (品種:日本晴) を,赤色光のみを照射 (以後,R100区) ,または赤青混合光を照射 (全PPFDに占める赤色光と青色光の割合がそれぞれ80%と20%;以後,R80B20区) し,PPFD 460 µmol m-2 s-1 で35日間水耕栽培した.光源には赤色と青色の発光ダイオードを用いた.
個体乾物重,草丈,総葉面積,比葉面積 (SLA) ,葉重比 (LWR) には処理間に有意差はなかった.個体の還元態窒素集積量はR80B20区がR100区より大きく,各器官への還元態窒素量の分配の割合には処理間に有意差はなかった.そのため,葉身における葉面積あたりの還元態窒素量はR80B20区で大きかった.R80B20区において,個体全体および葉面積あたりの還元態窒素量がR100区より大きくなる傾向は,低窒素栄養条件下で栽培したイネでも認められた.
以上より,イネでは赤色光への青色光の添加により窒素吸収が促進される可能性が示唆された.現在,日本晴と窒素吸収特性の異なる品種であるササニシキを用いた調査を検討している.