抄録
青色光による気孔開口や葉緑体光定位運動は光合成に関連した青色光反応の典型例である。これらの反応は青色光照射に対する一時的な応答である。一方、長期間青色光を照射して植物を育てた場合では、植物は青色光に対して光合成特性をどのように変化させて応答をするかについては不明な点が多い。そこで我々は、1)赤色光460 μmol m-2 s-1、2)赤色光370 μmol m-2 s-1+青色光90 μmol m-2 s-1の混合光をそれぞれ1ヶ月間連続照射してイネ(日本晴)を栽培した。そして、栽培終了時の最上位完全展開葉を用いて光合成機能因子の主要なタンパク質量と全窒素量を測定し、青色光は各光合成機能因子の能力間のバランスに変化を与えるかについて解析を行った。
赤青混合光照射イネは赤光照射イネに比べ葉身のRubisco量、クロロフィル(Chl)量および全窒素量が増加した。また、Rubisco量に対する全窒素量、Chl量に対する全窒素量の関係は成育時の光質環境に関係なくそれぞれ一本の直線に回帰される傾向にあった。すなわち、赤色光への青色光の添加は、葉身の全窒素量の増加に伴い各光合成機能因子の能力をそれぞれ増加させるものの、ある特定の光合成機能因子の能力を特異的に向上させるような窒素分配の変化は起こらないことを意味している。現在は、他の光合成機能因子のタンパク質や酵素の活性を測定し、いくつかの検討を加えている。