抄録
私たちの研究室では、イネにおける光応答反応の解明の一環として青色光受容体であるクリプトクロム(CRY)遺伝子群を単離し、その機能解析を進めている。シロイヌナズナのCRY遺伝子と相同性を示すイネのESTクローンをプローブにして、これまでに3種類のCRY遺伝子と思われるcDNAをイネから単離した。それらの塩基配列を比較したところ、このうち2種類のCRY遺伝子(OsCRY1a, OsCRY1b)は全体にわたって互いによく似ており、またシロイヌナズナのCRY1遺伝子(AtCRY1)と相同性が高かった。もう一つの遺伝子(OsCRY2)はAtCRY1よりもAtCRY2との相同性が高かった。OsCRY1a(あるいはOsCRY1b)とOsCRY2のアミノ酸配列を比較するとN末端側領域にある程度の相同性がみられるが(59%)、C末端側領域ではほとんど相同性がみられなかった(16~17%)。
次に組織別ノザン・ハイブリダイゼーションによって発現部位の解析を行った。OsCRY1a、OsCRY1bは同様の発現パターンを示し、緑化芽生えの地上部で最も発現が強く、黄化芽生えの葉や成熟した葉でも強い発現がみられた。一方、OsCRY2はOsCRY1a、OsCRY1bとは異なった発現パターンを示し、特に子葉鞘や花で強く発現していた。さらに、OsCRY1a、OsCRY1b、OsCRY2それぞれに特異的な抗体を作製し、タンパク質レベルでの発現パターンや光の影響などを調べた。