抄録
ヒメツリガネゴケにおける分枝形成は光により制御されることが知られている。ヒメツリガネゴケでは青色光受容体として知られているニ種類のクリプトクロム遺伝子(CRY1aとCRY1b)が単離され、これらの遺伝子破壊株の解析により、クリプトクロムは青色光による分枝誘導に働くことが報告されている(Imaizumi et al., 2001)。
今回我々は、青色光誘導分枝形成にかかわる二つの異なる赤色光の作用を見い出したので報告する。単独の赤色光照射では分枝誘導はあまり起こらないのに対し、赤色光を青色光と同時照射すると、青色光による分枝誘導率は上昇し青色光の効果が促進されることが分かった。微光束照射実験により、この赤色光の作用は核付近が照射された時のみ起こることから、光受容部位は核周辺部にあることが示された。さらに、青色光と同時に与える赤色光を偏光として照射すると、その偏光面の違いによる分枝誘導の促進効果に差は認められないものの、分枝の出現部位は偏光面に依存して決定されることが分かった。これらのことから、赤色光は分枝の促進に加え、二色性配向した受容体を介して、分枝の位置決定機構にも関わっていることが示唆された。