日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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光による葉身と葉柄の伸長制御メカニズムの解析
*小塚 俊明キム キョンテ堀口 吾朗塚谷 裕一
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p. 548

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抄録
植物にとって、様々な光環境への適応は極めて重要である。特に、主要な光合成器官である葉にとって、いかに効率よく光を得るかは、生存競争のための鍵となる。従来、光による器官伸長制御の解析には、芽生えの胚軸が主に用いられてきたが、それ以外の器官における光制御については未だ不明のままである。そこで本研究は、光環境による葉の伸長制御機構について解析を行なった。まず、光合成を介した光による伸長促進は、葉身、葉柄に共通していた。一方、赤色光あるいは青色光の強度に対する反応を解析した結果、伸長に対して共に葉身は促進的、葉柄は抑制的な反応を示すことが解った。次に光受容体変異株を用いた解析から、葉身と葉柄における伸長制御には、phyBとcry1依存的な光シグナルが必須であることが、明らかとなった。従って、光シグナル伝達系の下流に、葉身と葉柄の器官伸長を特異的に制御するための分岐点が、存在すると考えられる。また、ブラシノステロイド合成に関わるCYP90D1遺伝子の発現は、暗所での葉柄において強く誘導された。この結果は、葉身と葉柄における光シグナルの逆転は、すでにブラシノステロイド合成の制御の段階以前に起きていることを示唆する。光合成を担う葉にとって、この逆転の機構は、光環境適応性のための中心的な機構であると考えられる。これらの結果をふまえて、光環境と葉の伸長メカニズムについて考察する。
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© 2003 日本植物生理学会
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