抄録
いもち病菌に対するイネの抵抗性機構を調べるために,いもち病菌の感染初期にその発現が変動する遺伝子をイネ9000 cDNAマイクロアレイを用いて解析した.また,イネの耐病性発現にエチレンが重要な役割を果たしている可能性があることから,エチレン前駆物質 1-aminocyclopropane-1-carboxylate (ACC)に応答する遺伝子も解析した.実験には,いもち病菌race 003に対し罹病性のイネ品種(cv. Nipponbare),および抵抗性のイネ品種(cv. IL7: いもち病抵抗性遺伝子Pi-iを有する準同質系統)を用い,その第4葉期植物の完全展開葉を供試した.イネにいもち病菌を接種し,抵抗性イネ品種に壊死病斑が生じはじめる接種42 hr後,及び,ACC処理し24 hr後に,total RNAを抽出し, microarrayに供試し遺伝子の発現変動を解析した.その結果,抵抗性イネで特異的にその発現が増大または減少するものは それぞれ,1,541と86クローン, ACC処理において発現が増大および減少するものは それぞれ,51と51クローンであった.両者で共通して上昇するものは28クローンあり,いもち病菌への抵抗性応答において特異的に発現が誘導される遺伝子の中にエチレンシグナル系に関与する遺伝子があることが推測された.その詳細について報告する.