抄録
維管束は木部、篩部、前形成層からなる複合組織であり、その形成は非常に秩序だっている。しかし、その分子機構の詳細は明らかになっていない。私達はこれまでに木部分化を細胞レベルで解析できる系を持つヒャクニチソウにおいて、HD-Zip型クラス IIIホメオボックス遺伝子ZeHB-10,-11,-12を単離し、これらの遺伝子が木部分化に関わることを示してきた。今回、同じくHD-Zip IIIに属する遺伝子ZeHB-13を新たに単離し、その発現解析を行った。その結果、ZeHB-13はZeHB-10,-11,-12と同様にin vitroで木部分化特異的に発現するが、木部分化過程での経時的な発現はZeHB-10,-11,-12に先立っていることがわかった。さらに、ZeHB-13はZeHB-10,-11,-12とは異なり管状要素分化の進行に必須なブラシノステロイドによる発現誘導を受けないこともわかった。また、植物体におけるZeHB-13の発現は維管束特異的に、特に前形成層に強く見られた。以上の結果はいずれも、ZeHB-13がZeHB-10,-11,-12よりも木部形成の初期に働くことを示しており、HD-Zip III遺伝子群が木部分化において各々異なる機能を持ち順次働くことで、木部形成がなされると考えられた。