抄録
ヒャクニチソウ培養系では単離葉肉細胞から管状要素への分化転換を高頻度で誘導できる。この培養系に対するマイクロアレイ解析によってこれまでに、数多くの遺伝子群が管状要素分化と関連して発現調節されていることが示唆された。これら遺伝子群の機能解析を目的とし、近年我々は、エレクトロポレーションによるヒャクニチソウ培養細胞へのプラスミド導入系を開発した。この系では、プロトプラスト化を介さないことにより管状要素分化の頻度・同調性が維持され、プラスミドの導入効率はレポーターである 35S プロモーター制御下の GFP 発現から、細胞の約 1% 以上と見積もられた。そこで今回は、二本鎖 RNA を用いた遺伝子機能解析の可能性について検討した。まず GFP と相同な二本鎖 RNA を合成し、プラスミドと共に細胞へ導入したところ、GFP 発現の阻害が確認された。次に、セルロース合成酵素をコードする CesA 遺伝子をモデルとして、二本鎖 RNA 導入による管状要素の形態変化を調べた。その結果、管状要素の形態形成時に一過的に発現する CesA の二本鎖 RNA によって、2 割以上の管状要素に形態異常が認められた。このような二本鎖 RNA は、マイクロアレイ解析に用いた cDNA を鋳型に簡便に調製できることから今後、管状要素分化に関連して発現する遺伝子群について、迅速かつ多量な機能解析が可能であると考えられた。