抄録
オオムギ、トウモロコシ、イネを材料にPETIS(Positron emitting tracer imaging system)法を用い、 52Feの吸収・移行の動態を非破壊リアルタイムで計測した。全ての結果において最初に強く52Feが蓄積する部位は茎葉部の基部にあたるdiscrimination center(DC)であった。1)鉄欠乏1週間目と鉄十分条件下のオオムギ(品種:エヒメハダカ)にそれぞれ52Fe-デオキシムギネ酸(DMA)を経根投与した。鉄欠乏区におけるDCへの52Feの蓄積量は鉄十分区の約12倍であった。2)鉄欠乏4日目と鉄十分条件下のオオムギにそれぞれ52Fe-DMAを葉の切断面から投与した。どちらも地上部からの52Feが根の先端や最新葉に移行した。3)鉄欠乏1週間目のオオムギで0.1 mM ABAを2時間前処理したものに52Fe-DMAを経根投与したところ、ABA処理をしなかった鉄欠乏のオオムギに比べて約60%にまで地上部への移行が抑えられた。4)「鉄・ムギネ酸」のトランスポーターであるYS1を欠損したトウモロコシの変異株ys1と野生種(品種:Alice)を鉄欠乏条件で育て、52Fe-ムギネ酸を経根投与したところ、地上部への移行はys1の方が野生種に比べて20%にまで減少した。5)出穂後3週間目のイネ(品種:日本晴)において、1週間鉄欠乏処理したものと鉄十分条件で育てたものに52Fe-DMAを経根投与したところ、鉄欠乏区は穂や止め葉において鉄十分区に比べて約5~10倍の52Feが蓄積した。