抄録
イネのサイトゾル型グルタミン合成酵素(GS1)は、免疫組織化学的解析などにより、篩管を介して老化葉身から転流されるグルタミンの生合成に主として関与していることが示唆されている。本研究では、この生理機能についてGS1欠損変異体を用いて証明することを目的とした。
イネの内在性レトロトランスポゾンTos17を転移させて作製されたイネ「日本晴」遺伝子破壊系統群 [RGP、ミュータントパネル(廣近、宮尾)]より、GS1遺伝子第8 exonにTos17が挿入された遺伝子がホモ接合体となった変異体osgs1が得られた。この変異体は、葉身におけるGS1タンパク質含量が著しく減少しており、活性も大幅に低下していることが明らかになった。免疫組織化学的解析により、通常GS1が多く蓄積している細胞群には、シグナルは検出されなかった。主に根で発現するGSrへのTos17の挿入はないことを確認している。生育の遅延や、不稔などの表現型は、後代においても確認された。PCR法による三次元スクリーニングにより、GS1遺伝子にTos17が挿入されている新たな系統を4系統獲得した。このうち、第8 exon、第10 exonにTos17が挿入されている2系統を栽培したところ、挿入された遺伝子がホモ接合体となった変異体において、osgs1と同様の表現型が確認された。