抄録
珪藻は、地球全体の炭素固定の約25%と言われている。カーボニックアンヒドラーゼ(carbonic anhydrase : CA)は、炭素固定を行う上で重要な役割を担う因子の一つである。本研究では、海洋性珪藻Phaodactylum tricornutumを用いて、CO2と光によるCA発現の影響と、CAの局在性を調べた。光照射下あるいは暗下で、HighCO2環境成育細胞をAir環境へ24時間順化させたところ、mRNA・タンパク質レベル共に光の有無に関係なく発現量は増大したが、光存在下の方が発現レベルは高かった。HighCO2細胞をAir環境へ5日間順化させたところ、約24時間周期で発現の増減が見られ、また、時間の経過とともに発現量が増加する傾向が見られた。これらの結果から、CAは環境CO2濃度変化が発現の引き金になり、光は発現量を促進すること、発現は細胞周期と関わっていることが考えられる。CAの局在を見るために、CA前駆体のN末端46アミノ酸配列をGFPの上流に連結したキメラコンストラクトを同細胞内に発現させ解析を行ったところ、葉緑体に存在することが分かった。