抄録
藻類は、水圏における炭素固定に重要な役割を果たしていると考えられている。無機炭素濃縮機構(CCM)は、藻類細胞が無機炭素に対して極めて親和性の高い光合成を行うために中心的な役割を果たす機能である。本研究では海洋性珪藻の一種Phaeodactylum tricornutumの細胞内β型carbonic anhydrase (CA ; EC 4.2.1.1)が、生育環境中のpCO2変化に鋭敏に反応して発現制御を受けることに注目し、この遺伝子プロモーターの解析を行った。Inverse PCRにより単離したCA上流領域にGUS遺伝子をつなげたコンストラクトを作製し、パーティクルガンで細胞に導入した。その結果、大気レベルのpCO2環境で生育した細胞では、5%pCO2環境で生育した場合と比較して約15~25倍程度のGUS活性の上昇が見られた。現在上流配列を欠失させたレポーターコンストラクトの導入により、生育環境中のCO2濃度変化に応答した遺伝子発現調節に必要なシス領域の解析を行っている。