抄録
葉の老化過程においてRubisco量の減少は葉緑体数の減少よりも先だって起こっている事から、Rubiscoは葉緑体内か、もしくは葉緑体外に排出されて分解されると考えられている。本研究では、コムギ葉の老化過程におけるRubiscoの量的変化と細胞内における局在の変化を調べることにより、Rubiscoが葉緑体外で分解される可能性について検討した。
免疫電顕法による観察の結果、老化葉においてはRubisco-LSUが葉緑体ストロマだけでなく、細胞質に存在する直径0.4-1.2 μmの小胞にも局在していることがわかった。このRubiscoを含む小胞 (Rubisco-Containing Body, RCB) は、急速凍結置換法により作成した試料においても観察された。RCBにはRubisco以外にもストロマタンパク質であるGS2が局在していたが、チラコイド膜タンパク質であるLHC II, Cyt f, CF1は局在していなかった。また、葉緑体からストロマ画分を囲い込んだ包膜の突出が観察されたことから、RCBは葉緑体由来であることが示唆された。RCBの数は、葉の一生においてはRubisco量が減少をはじめる老化初期に増加していた。これらの結果よりRCBが葉の老化過程において、Rubiscoを分解のために葉緑体外へ運び出す役割を担っている可能性が示唆された。