抄録
酸性雨が植物の光合成機能や生育に及ぼす影響については現在にいたるまでに多くの研究がなされている。しかし、酸性ではないほぼ中性の降雨が光合成機能に大きな影響を与える場合があることはあまり知られていない。例えば、雨滴が付着しやすい表面構造をもつインゲンの葉では、葉面が濡れるとすぐに光合成機能が30%ほど低下し、濡れが長期間に及ぶと顕著な成長阻害が生じることが分かっている。本研究では、ストレス要因として葉面の濡れに注目し、人工降雨装置を使って光合成機能や成長の低下を引き起こすメカニズムを明らかにすることを試みた。その結果、インゲンの葉面の濡れによる光合成機能の低下は、酵素Rubiscoの量が減少することが原因である可能性が高いこと、また濡れによってRubiscoの分解が促進されていることが分かった。すなわち、葉面の濡れによる光合成機能低下は、従来考えられていたような気孔要因だけではなく、光合成の機構そのものの変化によって引き起こされていることが明らかになった。