抄録
我々はオーキシンを介した側根形成の分子機構を解明することを目的として、側根を完全に欠失するシロイヌナズナの優性変異体solitary-root(slr)と原因遺伝子IAA14(オーキシン誘導性Aux/IAA遺伝子)の解析を行なってきた(Fukaki et al., Plant J. 2002, 29, 153-168)。本大会では、slrの側根欠失表現型を抑圧するサプレッサー変異体ssl2( suppresor of slr 2)の解析結果について報告する。ssl2は単一劣性変異で、これまで独立に4つの変異体アリル(ssl2-1~ssl2-4)を単離した。 ssl2 slr二重変異体では、slrの側根欠失表現型が一部回復し、側根を形成するが、slrの他の表現型(根毛形成異常・重力屈性異常)の回復がみられない。この結果から、SSL2遺伝子は側根形成特異的にSLR/IAA14と遺伝的に相互作用すると考えられる。SSL2遺伝子座の高精度マッピングにより、ssl2-1~ssl2-4変異体すべてにおいてAt2g25170遺伝子に変異を見い出した。At2g25170遺伝子は、SWI2/SNF2 ATP-dependent chromatin remodeling factor のCHDサブファミリーに属するCHD3(Chromodomain-helicase-DNA-binding3)/Mi-2ホモログで、CHR6/PICKLE/GYMNOSと同一産物をコードしていた。この結果から、オーキシンを介した側根分裂組織形成にクロマチン再構築因子CHR6/SSL2/PKL/GYMが関わることが示され、植物の根系構築における新たな制御機構の存在が強く示唆された。