抄録
一般に、組織培養におけるシュート形成は、再分化能の獲得(脱分化)、シュート形成の誘導、シュートの形態形成と生長の3つのステージから成ると考えられている。AP2/ERFクラスの転写制御因子であるシロイヌナズナESR1は、シュート形成時に一過的に発現が誘導されること、強制発現により、シュート形成効率が飛躍的に上昇することなどから、ESR1はシュート形成の開始を制御していると考えられている。我々は、ESR1の発現誘導からシュート形成に至る分子機構を明らかにするために、ESR1のターゲット遺伝子の検索を行っている。エストロゲンを培地に添加することにより、ESR1を強制発現できる形質転換シロイヌナズナを用いて、シュート形成過程において、エストロゲンを加えた時に特異的に発現量が上昇するcDNAライブラリーをサブトラクション法により作製した。野生株では、ESR1はシュート形成時に一過的に発現が誘導されることから、ESR1のターゲット遺伝子も野生株では、同時期、あるいはやや遅れて発現が誘導されると考えられる。現在、そのような発現パターンを示す遺伝子をサブトラクションライブラリーから検索している。また、in vitroにおいてESR1が結合するDNA配列が決定されているので、それらの遺伝子のプロモータ中にESR1の結合配列があるかどうかもESR1のターゲット遺伝子かどうかの判断基準になる。