抄録
イネgid2変異体は濃緑・幅広の葉を示す矮性変異体である。gid2変異体はジベレリン(GA)に対して非感受性であり、胚乳でのGA によるα-アミラーゼの誘導が起こらない。またgid2変異体では矮性にもかかわらず、活性型GAが野生型の150倍にも蓄積しており、GAシグナル伝達に異常を来した変異体であることが予想された。
GID2の機能を明らかにするためポジショナルクローニング法を用いて原因遺伝子の単離を行った。その結果、gid2変異体の原因遺伝子はF-boxタンパク質をコードしている可能性が示唆された。GID2遺伝子候補領域を含む4.2Kbのゲノム断片を用いて相補性試験を行ったところ、この領域はgid2変異体の表現型を完全に相補した。またgid2変異体の2つのアリルについて塩基配列を決定したところ、これらのアリルはGID2に変異が起きていることが確認された。以上のことよりGID2はF-boxタンパク質をコードしていると結論した。
これまでの研究より、GAシグナルの抑制因子であるSLR1はGA シグナル依存的分解をうけることが明らかとなっている。野生型ではGA処理によるSLR1タンパク質の分解が起こるのに対し、gid2変異体ではGA処理後もSLR1 タンパク質が蓄積していた。これらのことより、SLR1はGAシグナル依存的にSCFGID2によって分解される可能性が示唆された。
本研究の一部は生研機構基礎推進事業の支援で行った。