抄録
キュウリ、トマトの胚軸を用いた以前の我々の研究から、傷をつけた胚軸の皮層における組織癒合過程の細胞分裂にジベレリンが必要であること、また、このジベレリンの生産に子葉の存在が必須であることが示された。本研究では、胚軸における組織癒合に関わるジベレリンの実体解明を目的として、キュウリとトマトの芽生えにおけるジベレリン生合成酵素遺伝子の発現、および内生ジベレリンの解析を行った。
RT-PCRを用いて、トマト芽生えにおいて主要に発現していると考えられるジベレリン生合成遺伝子Le20ox1、Le3ox2 の器官別発現を調べたところ、本葉未展開の植物体ではいずれの遺伝子のmRNA量も子葉でもっとも高かった。また、これらのmRNA量は植物体の生長とともに減少した。次に、播種後7日目のキュウリ芽生えから子葉を切除し、胚軸における内生ジベレリン量を子葉を保持したままの植物体と比較したところ、活性型ジベレリンであるGA4、およびその前駆体が子葉を切除した場合に減少することが示された。以上の結果から、キュウリ、トマトの胚軸における内生ジベレリン量の調節には、子葉が関与している可能性が考えられる。